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卒業生インタビュー:濱崎惟さん (IMBA2013)

2013年にIEを卒業し、現在は物流ソリューションを提供するスタートアップ、株式会社HACOBUのCFOとしてご活躍の濱崎さん。今回はオフィスにお邪魔してお話を伺いました。

 

まず、これまでのキャリアについて教えてください。


大学を卒業したのが2008年で、それから野村證券で営業をやったあと、ホールディングスのファイナンスに異動し、そこで経理や財務システムを変えるプロジェクトや、組織再編のプロジェクトなどに携わっていました。

そのあとIEへMBA留学しました。IEを選んだのは、グローバルにビジネスを展開する基礎力を作りたかったからです。あとは大学時代に、もう少しちゃんと勉強しとけばよかったな、という気持ちがあったので、せっかくやるなら実業に役に立つものが良いということで、MBAにしました。その頃から、スタートアップにも興味があったので、IEを選びました。


 

私費ですよね。


はい。それで2013年に留学から帰ってきたら、お金がなさすぎたのもあり・笑。 ちょっと稼ごうと思って、笑、A.T.カーニーに入って3年弱働きました。たまたまそのとき今の会社にご縁がありました。一応CFOってことになってるんですが、資金調達活動とかバックオフィスのことをやりつつ、他にもいろいろやってますね。


 

今の会社の業務を教えてください。まずは、HACOBUの説明からしていただけますか?


うちの会社は、MOVOというサービスを提供しています。M、O、V、Oですね。これは、ムーブ、動くと、オプティマイゼーション、要は「運ぶ」を「最適化する」っていう造語なんですね。

具体的には、物流向けのクラウドソリューション。業務用のクラウドワークアプリケーションを作っていて、物流の中でも企業間物流に特化しているのが特徴です。

 

物流の話題となると、宅配便をイメージされる方が多いですが、消費者の視点ではそっちが目立つというだけで、宅配は3兆円マーケットですが、企業間物流は10兆円のマーケットって言われているんです。かつ、非常に中小企業が多く、最適化が進んでいない業界です。デジタル化が進んでいかないと、ドライバーの高齢化とか、要員が足りないとか問題が生じます。あとは、ECの浸透で配送頻度が上がったりとか。あとは、配送品質に対する要求が上がっていたり・・・。いろんな問題があって、このままだと立ち行かなくなると可能性があります。

それに対し、物流向けのソリューションは大手のシステムベンダーが大手企業向けにカスタマイズして作るものか、中小向けというと、個別の機能に細分化されたものしかなくて、配送に関する業務全体をオンラインで管理できる、誰でも使えるツールがなかなかなかったんですね。

 

それをSaaSで提供し、大手から中小までネットワークを繋いで、デジタル化をサポートする。デジタル化ができるとデータが溜まっていって、いろんな最適化が将来的にはできるようになるというビジョンがありますね。

 


 

どんなアプリケーションなんですか?


アプリケーションとしては今大きく分けて三つあります。ひとつは、「求車」、という、荷物とトラックをマッチングさせるサービス。二つ目は動体管理といって、トラックの位置をGPSで把握するようなもの。これ実は意外と、BtoBの世界だとされてないので。それから三つ目はパース管理。バースというのは、倉庫でトラックをつけて、荷物を積んだり下ろしたりする場所なんですが、そこのスケジューリングがうまくいっていないと、倉庫の前にトラックが待機しなければならないんですね。それを上手くやるための仕組み。そんなアプリケーションを足元で売りながら、ゆくゆくは企業間物流のデータ、デジタル基盤を作っていきたい。そういう会社ですね。


 

お客さんとしては、基本的に配送業社さんということですか?


アプリケーションによっても違うんですが、基本的には物流に関わる企業は全てお客様になり得ます。たとえば、倉庫の入出をコントロールする仕組みでいうと、その倉庫を管理している物流会社。 これは、3PLっていわれたりしますが、要は委託を受けてるわけですね、荷主から。この人たちは、オペレーションをよくしていかないと、ドライバーが足りなかったりして回らなくなるんですね。だからそれを最適化したいというニーズがある、と。一方で、じゃあその荷主は無関係かというと、荷主のほうでも、結局その物流センターには、自社の看板がついてるわけです。そこでたとえばドライバーが長時間待機させられて、中々搬入できないとなると、長時間労働みたいな観点でよくないということにもなりますし。サプライチェーンという観点からも悪影響がある。荷主もこれに当然興味があります。また、3PLから更に配送を受託するような物流会社。そこからまた多段下請けがあったりします。そういう元請けから、地場大手、それから中小、零細って流れていくんですが、これらの会社にとっても、そもそもあんまり、今までリーズナブルな値段、かつ高機能な業務システムが少なかったので、ニーズはあります。


 

そうなんですね。濱崎さん、A.T.カーニーで担当してた業界って物流だったんですか?


 

消費財と、あとはM&Aに関わる案件が多く、物流は関係ないですね。


 

今はCFOですが、他にも色々担当されているとおっしゃっていました。


ファイナンス・バックオフィスに加え、営業として外に出ることもありますし、最近は開発チームをマネジメント的な立場からサポートすることもやっていますね。


 

濱崎さんのこれからの目標は?


会社のゴールとしては、企業間物流の世界の最適化を実現。そのために、物流情報プラットフォームを作りたいですね。今は下請けとかに行くと、全部紙とか電話とかアナログな手段でやりとりされている。それをデジタル化していくっていうことによって、社会インフラがこれからも維持強化されていく。そんな取り組みを、ずっと続けていきたいです。しかも日本だけじゃなくて、グローバルに展開していくような組織にするのがゴールですね。


 

IEで勉強したことですが、今の役に立ってますか。


ひとつ役に立ってるのは、主にコンサル時代ですが、グローバルなプロジェクトに抵抗がなくなりましたね。語学力だけではなく、マインドセットとしていろんなバックグラウンドの人と一緒にやるっていうことに対して抵抗がなくなったのは、すごく大きかったですね。 今の会社はまだ国内中心ですが、海外のスタートアップと会話することもあり、そういう時は役に立ちます。


 

なるほど。授業としては印象に残っているものは?


個人的にオペレーションの授業がすごい面白かったんですよね。それまでずっと、ファイナンスしかやってなかったから、全然知見がなくて。オペレーションマネジメントの考え方っていうのはすごい面白くて。ATカーニーにいたときは、戦略とマーケティングのプロジェクトしかやってないから、直接的にはあまり役に立ってないんですけど、考え方のエッセンスとしては、よかったと思っています。


 

最後に、これからIEに行きたい。あるいはMBAを考えてる人に、メッセージをいただけたますか。


難しいな。そうですね。僕はどっちかいうと内向的な性格なんですけど、今の仕事は特に、いろんな人といろんなことで関わって、いろんな意思決定をしなきゃいけない。それで今振り返ると、IEみたいなダイバーシティのある環境に、どっぷり1年浸かるっていうのは、免疫がつくというか、面白い経験でしたね。そういう意味では、よくできたプログラムだなっていう感想です。


 

ありがとうございました!


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私費留学だと、卒業後に様々な道へ進む方がいます。ただ、MBA卒業後すぐのキャリアがすべてではなく、長いキャリア人生の中で自分の好きなこと、自分が持つ経験・能力と、自分が今求めているものを組み合わせて考えながら、その時々でやるべきことを選んでいく。そしてそれが長い目で見て社会課題解決の為に役立つ。そういう素敵なキャリアを歩んでいるなと、濱崎さんのお話を聞いて感じました。